ヘパリンNa投与中患者急変時のプロタミン投与量

緊急OPE等で探している人向けに結論から

ヘパリンNa24h持続投与中の患者

プロタミン投与量=定常状態ヘパリン量×10~15㎎/1000・・・(1

定常状態ヘパリン量=(24時間持続投与量)/24h/0.7h⁻

夜間当直中にヘパリン置換中の患者急変にのため緊急手術決定

持続投与中のヘパリンを中和するためのプロタミンの投与量について

医者から急ぎの問い合わせがありました。

23:00 PHS prrrr…こんぶ『薬剤部オンコールこんぶです』

外科医『あ、こんぶさん、緊急オペをするのでプロタミンの投与量の相談です。ヘパリンを1日1万単位持続静注しているので、100~150㎎/10~15mlくらい必要だと思うんですけど1回50㎎までってかいてあるんですよね。でもこれじゃあ、全然足りないですよね?どうすればいいですか?』

通常、ヘパリン置換している場合は術前4~6時間くらいにヘパリンを中止していますが、今回はそれを待つ猶予はなく、一刻を争う状況であるとのことでした。
こんぶ『半減期1時間くらいなので、1万単位ではなく定常状態相当のヘパリンNaが中和できれば良いはずです。それでは過量投与になると思います。計算してすぐ電話折り返すので少し時間をください。』

さて、プロタミンの添付文書を確認しましょう。

プロタミン硫酸塩静注100㎎『モチダ』

効能・効果

ヘパリン過量投与時の中和、血液透析・人工心肺・選択的脳灌流冷却法等の血液体外循環後のへパリン作用の中和

用法・用量

通常、へパリン1,000単位に対して、本剤1.0〜1.5mL(プロタミン硫酸塩として10〜15mg)を投与する。
ヘパリンの中和に要するプロタミン硫酸塩量は、投与したヘパリン量及びヘパリン投与後の時間経過により異なるので、本剤の投与量はプロタミンによる中和試験により決める。
投与に際しては、通常1回につき本剤5mL(プロタミン硫酸塩として50mg)を超えない量を、生理食塩液又は5%ブドウ糖注射液100〜200mLに希釈し、10分間以上をかけて徐々に静脈内に注入する。

電話してきた医師はこの点を疑問に思ったのでしょう。

ヘパリンNa1万単位を中和しようと考えていたようですが、実際にはプロタミン投与時に体内に残留しているヘパリンNa中和できれば良いので、ヘパリン1万単位を中和するプロタミンを投与した場合かなりの過量投与になることは容易に想像できます。

ヘパリン1万単位/dayの持続静注をしていますから、

ヘパリンNaの定常状態量を求めることでプロタミンの投与量が決定できます。

ここで薬剤師の職能発揮です!

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薬物速度論(Pharmacokinetics,PK)

定速静注に関しては

ヘパリン半減期40~60分(1 ヘパリンNa5千単位『持田』IFより

Css:定常状態薬物濃度、Vd:分布容積、Kel:消失速度定数、I:薬物投与速度

上記より、定常状態におけるヘパリンの単位数を推定します。

Css・Vd=10000単位/24h・1h/0.7=595単位≑600単位

ヘパリンNa600単位に対するプロタミン投与量は

600単位/1000単位・10~15㎎=6~9mg

さて、ここまで計算したらあとは連絡です。

こんぶ『外科医先生、おまたせしました。体循環中に定常状態として残留しているヘパリンNaはおよそ600単位相当と推定できます。プロタミン10㎎ほどで十分に中和が可能と考えます。よろしくお願いします。』
その後、プロタミン10㎎の処方箋を確認し、調剤しました。
後日、特段の大出血等無くオペは終了したと連絡を受けています
あくまで私個人の経験談ですので、ご指摘などございましたらいただけますとありがたいです。
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